c.1890–1910 France / Tribal Motif Chatelaine / Silver 800
19世紀末のフランスで制作された、シャトレーヌ。
シャトレーヌとは、懐中時計や鍵などを吊るすための道具として用いられていたものです。
本品は全長7.7cmほどと扱いやすいサイズで、銀工芸としての密度を保ちながら、現代の日常にも自然と馴染むバランスを持っています。
造形に目を向けると、当時のフランス銀細工に頻出する花や蔓のモチーフではなく、抽象的な曲線と紋様によって構成されている点が非常に興味深い特徴です。中央のリング状パーツには、植物とも縄とも蛇行とも解釈できる節付きの曲線が施されており、植物を写し取る自然主義ではなく、装飾の反復による紋様として成立しています。これは同時代のアール・ヌーヴォー期やアール・デコ期の特徴とは異なり、ボヘミアンや東欧の民芸的な銀細工に近い視覚性を帯びています。
装飾史的に見れば、フランスの美術史の正統からわずかに逸れており、無国籍的でありながら手の温度を残した銀工芸と言えます。フランス製でありながら、フランス的なデザインとは異なる方向を向いていることは珍しく、移民工房や地方工房の影響を示唆する個体です。
素材にはフランス銀を示すSilver 800が用いられ、裏面にはミネルヴァ刻印と工房ホールマークを確認できます。
本来シャトレーヌは、懐中時計や鍵、裁縫具などを吊り下げるために作られた実用品であり、機能性と必要性を前提として生まれた存在でした。しかし銀をまとい、装飾を纏うことで、道具でありながらジュエリーの領域にも触れてしまう点に、当時の銀文化の豊かさが現れています。
実用品として生まれた稀有なジュエリー。
現代においては、キーリングやバッグチャームとして再解釈することで、日常の装いに当時の工芸を差し込むことができます。小ぶりなサイズ感と抽象化された紋様により、過度に甘くも華美にもならず、単なる装飾ではなく、単なる道具でもなく、その中間に位置するアンティークとして、ユニセックスに取り入れられる点も魅力です。
100年以上前に制作された銀製の日用品が、現代の必需品として。
• 推定年代:1890年代前後(ベル・エポック期)
• 製造国:フランス
• 素材:Silver 800(ミネルヴァ刻印 2nd titre/工房ホールマーク)
• サイズ:全長 約7.7cm / 最大幅 約1.6cm / クリップ部分 約4.5cm
• コンディション:経年による小傷や銀特有のくすみを伴いますが、100年以上前の品として良好な状態です。
※当店で扱うアンティーク・ヴィンテージ品は、いずれも経年による小傷やくすみなどが見られます。それらは歴史を経た品の特性としてご理解の程よろしくお願いします。
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